女子プロ野球リーグ「WPBL」初年度を終えて|アメリカ挑戦で得たもの

2026年8月1日に開幕したWPBL(Women’s Pro Baseball League)。初めての海外での野球、初めてのプロ選手としてのシーズンが終了しました。日米の野球文化の違い、プロ選手としての生活、グラウンドからの景色、毎日が新しい発見と刺激の連続でした。

遠く日本から温かい声援を送ってくださったファンの皆様、そして現地で支えてくださったすべての方々に、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました!

今回のブログでは、アメリカの舞台で一人のプレーヤーとして何を感じ、何に葛藤し、どんな手応えを得たのか。現地でのプロ生活を振り返りたいと思います。

プロとしての生活

アメリカでは、野球だけに集中できる環境が整えられていました。

リーグ期間中は用意されたホテルで過ごし、球場まではシャトルバスが運行していました。食事もホテルや試合前後のクラブハウスで提供されました。

試合がない日は各チームで1時間半〜2時間ほど練習。今年はかなり暑くなり、その影響で外での練習を避ける日が多かったです。高温や雨の日は室内練習場を使用して練習することができました。大きなフィールドに加え、バッティングレーン、ジムもあり、十分なトレーニングが可能でした。

これと同じようなフィールドが他に8つくらいありました!
ドーム型の室内練習場|SCHEELS Sports Park at Legacy Pointe | Enjoy Illinois

ウォーミングアップやキャッチボールの時間が日本より短く、慣れるまでは少し苦労しました。練習の流れが分かるようになってからは、前もってホテルのジムで体を動かしてから向かうなどの工夫をして、練習に臨みました。

試合の日は午後6時半くらいのプレイボールに合わせて、午後2時から3時くらいに球場に着き準備をしていきます。クラブハウスに用意されている軽食を食べたり、軽く体を動かしたり、音楽を聴いたりと全体練習の時間までは各自リラックスして好きなように過ごしていました。試合前練習が終わると一旦クラブハウスに戻り、着替えやミーティングをして、試合に向かいます。

試合前軽食で出たアサイーボウル。後ろに映るのはキム・ラギョン選手
試合後のケータリング

2チームが交互にグラウンドを使って練習をするので、ホームとアウェイでは試合前のスケジュールが異なります。試合前の過ごし方は大事だと思っているのですが、私は両方で別々のリズムを作らないといけないことに苦戦しました。ようやく掴めてきたなという時には終盤になってしまっていて、ここは反省点だと感じています。

試合後はファンの方にサインを書いて、クラブハウスに戻り着替えや片付けをして、ケータリングを食べてバスに乗り込むという流れでした。クラブハウスに戻るまでに、観客席の前を通るのですが、たくさんのお客さんが観客席の最前列に来てサインを求めてくれます。日本ではサインを書くことがあまりなかったので、はじめは戸惑いましたが、私の名前を呼んでくださったり、日本語を使ってくださったりする方もいて、ファンの方と直接交流できるとても良い時間でした。

ホテルについても試合の興奮が収まらないからか、なかなか寝付けないことが多かったです。今までこんなにたくさんの観客の前でプレーすることはなかったですし、スタジアムDJや音楽、お客さんもノリノリで、日本とは全く異なる環境の中で試合をしていたので、眠れないのも当たり前だったかもしれません。

WPBLで感じた「野球」と「ベースボール」

海外選手との野球を通して、多くの気づきがありました。20年近く野球を続けてきて、野球のまだ知らない一面を知ることはとても新鮮で、新しい環境での野球は素直に楽しかったです。 

男子野球でも言われるように、日本はミスが少なく戦略的なプレー、アメリカはパワフルで派手なプレーが好まれるなという印象を持ちました。守備や走塁、連携プレーは日本人の方が鍛られていて、バッティングはパワーだけでなくボールを捉える技術でもアメリカが日本を上回っていると感じました。

バッティングに関しては、「ラインドライブ」日本語だと「ライナー」を打てとよく言われたことも印象に残っています。弾道の低い打球を要求されたことが意外でした。確かに海外の選手の打球はとても速く、パワーに加えてラインドライブの意識が、強い打球を生み出しているのだろうと勉強になりました。試合会場の両翼が290フィート(約88.4m)、センターが330フィート(約100.6m)と距離が短縮されていたこともあり、ホームランの数も桁違いに多かったです。ホームランで決まる試合もたくさん経験しました。

NYはホームランを打った選手にブーツをかけて迎えます。来年はブーツかけてもらえるように!

野球観の違いで言えば、一例ですが、アメリカではまずは打てること、日本ではまずは守れること、というように重視されていることが違うように感じました。アメリカでは細かな部分はあまり気にせず、個々の能力での真っ向勝負が主でした。

バッティング重視のアメリカで試合をしていて脅威だったことは、安全な点差はないことでした。日本ではロースコアの試合で1点をどう守り抜くかというゲームが多いように思いますが、アメリカでは2桁得点が当たり前でした。8月30日のサンフランシスコとの試合では、ニューヨークが5点差で勝っていた最終回にサヨナラ満塁ホームランを含む7点を入れられ負けました。点差が開いていても最後まで勝負が分からないので、本当に最後まで気が抜けませんし、最後まで諦めずに戦っていました。

試合会場の雰囲気もかなり違っていました。日本の女子野球はアマチュアなので、プロリーグとの違いでもあると思います。

試合中は音楽やスタジアムDJがゲームを盛り上げます。選手一人一人に登場曲が流れ、かっこよく名前も呼んでもらえます。4回終了時のグラウンド整備中は、マイリー・サイラスの「Party in The U.S.A」という曲が流れ、みんなで歌って踊って盛り上がります。日本で球場で歌って踊るといえばアーティストのライブですよね。でもそんな感じの雰囲気でみんなノリノリでした。

ベンチにいる選手も音楽が流れると口ずさんだり体を揺らしたり、音楽にノル選手が多かったです。一度チームメイトに「スズも目を閉じて音楽に身をまかせてみなよ!」みたいなことをベンチで言われて、目を閉じてみたことがあります(笑)。ちなみに試合前のクラブハウスでも音楽はガンガンにかかっていて、監督も踊っていました。日本ではありえないので衝撃的でした。

マイリー・サイラスの「Party in The U.S.A」

試合をしていないチームの選手による、アイスの早食い競争なんかもありました。「野球を球場で見るという体験を、最高の体験にしよう!」というリーグの意気込みが伝わってきました。お金を払って観に来てくれているお客さんに喜んでもらうために、さまざまな仕掛けが用意されていました。

自分の試合がない日は、私もよく観客席から試合を見ていましたが、本当に楽しく、日本とは応援スタイルの違いを感じました。お客さんも最高で、一つ一つのプレーに大きく反応してくれて、熱気がありました。音楽に合わせて歌ったり踊ったり、楽しみながらこのリーグを一緒に作り上げてくれているように感じました。

公式マスコットキャラクター「メイベル(Maybelle)」。1940年代の伝説的な女子プロ野球選手がモデルです。

自分のプレー・結果の振り返り

私のチーム(ニューヨーク・ハイツ)は、レギュラーシーズンを2位で終えました。迎えたポストシーズンでは、セミファイナルで1勝2敗で敗退となり、ファイナルに進むことはできませんでした。

自分のプレーを振り返ると、初スタメンの試合で初ヒットとなる、センターオーバーの2塁打を打つことができたのは良かったと思います。ニューヨークに移籍してからは、1試合4出塁を記録した試合があったり、良い守備ができた試合もありました。

足を活かした守備や走塁は十分通用するという手応えを感じましたが、シーズン後半は打撃が不調で、ポストシーズンは出場機会も少なくなりました。個人的には満足のいく結果ではなく、ポストシーズンというチームの大事な時期に、調子を合わせられなかったことが本当に悔しいです。

私は2つのチームに所属しましたが、ロサンゼルスはビザのトラブルで、ニューヨークはトレードでどちらも途中からの合流となりました。チームの文化や雰囲気に慣れるのも大変でしたし、海外での実績が全くなかったので自分がどんな選手なのか早く知ってもらう必要がありました。自分のベストパフォーマンスを早く出したくて、焦ってしまっていたのだと思います。

試合を重ね、1日の流れや1週間の流れ、いろいろなことが分かってきて整ってきた頃にシーズンが終わってしまい、適応力不足や準備不足を感じました。振り返れば、アメリカに着いてからずっと体がふわふわ浮いているような、自分の体を自分で上手くコントロールできていない感じが続いていました。

分かっていたことですが、英語や食事、生活など野球をする以前の壁にもぶちあたっていました。環境が変わってもいつも通りのプレーをするにはどういった準備が必要なのか、今回の経験を必ず来シーズンに生かしたいと思います。

最大の収穫としては、元メジャー選手のコーチからバッティング指導を受けられたことです。調子が上がらなかった時に、自分から聞きにいけたことも良かったことだと思います。アドバイスもとても分かりやすく、その日のうちに良い感覚を得ることができて、本場アメリカの野球理論をもっと深く知りたいと思うきっかけにもなりました。

練習中のひとこま。コーチに感謝です。

まとめ:来年に向けて

約2ヶ月という短い期間でしたが、新しい環境に飛び込み、自分の力を知る良い挑戦になりました。そして何より、スポーツビジネスの世界の中で生活できたこと、女子野球をエンターテイメントとして魅せていく現場やその熱気を肌で感じることができたことは大きな財産となりました。

来シーズンの目標は、チームとしては優勝すること、個人としてはホームランを打つこと、ピッチャーとしてもっと長いイニングを投げることです。来シーズンに向けて、課題は山積みですが一つ一つクリアしていき、チームの力となれるように練習していきたいです。

今年の経験では、慣れない海外生活など野球以外でもたくさん苦戦しました。その中でもやはり英語の習得は大きな課題です。実際に関係があったかは分かりませんが、英語が話せないことでチャンスを逃したこともあったように感じました。海外の選手ともっと仲良くなりたいですし、自分の解釈で聞き取り、自分の言葉で自分の思いを伝えたいと強く思っています。このオフシーズンは英語ももっと頑張ります。

そしてもう一つ、新しい挑戦を控えています!また近日ご報告できたらと思っています。

改めまして、私の初めてのWPBLシーズンを応援してくださったみなさん、本当にありがとうございました。「球場で見たいと思うようなプレイヤー」が私が選手として目指している姿です。これからもまだまだ頑張っていきますので、引き続き温かい目で見守っていただければ幸いです!

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